蘭ちゃん。


先週末、地元に帰省しました。



妹の友人である蘭ちゃんが車を出してくれ、祖母を迎えに行ったあと祖父のお墓参りに向かいました。



車に乗り込み、片道一時間のドライブが始まったその数分後、祖母が突然、「蘭ちゃんわざわざありがとうね。腰が折れてるから助かったわ」と言いました。



私「ちょっと待って車止めて」



初耳でした。



往復2時間なのに!と驚いて話を聞いてみると、折れてはいたがほぼ治っており、今はリハビリ中とのこと。



蘭ちゃんも先月足を折っており、3人中2人の骨が折れているという異常事態。




どうなってんだ、、とは思いましたが、辛くなったらすぐ言うように何度も約束させて再び出発です。




祖母は普段一人で暮らしているためか、蘭も来てくれてとても嬉しそうでした。



いつもは陽気な人なのですが、一度脳の手術を行なってからは非常に心配性になってしまい、よく体の不調を訴えてきます。

今回も車内で、「あたしは味覚障害かもしれん」と呟いていました。



どういうことか聞いてみると、最近味がよく分からず、何を食べても美味しく感じられないとのこと。
また、塩分等にとても敏感なため、砂糖や醤油をあまり使わないようにしているのもあり、食事があまり楽しみでないようでした。



どこか悪いとやろか...と沈む祖母に、夜は美味しいものを食べに行こうと声をかけておきました。
味が分からずとも、誰かと食べれば、少しはマシなはず。



さて、ドライブも無事に終わり、お墓参りも済んで家に戻ってくると夜になったので、約束通り食事へと向かいました。



中華や洋食はキツイだろうと思い、和食屋へ入ります。



私「私はすきやき御膳にしよかな」
蘭「あたしは海鮮丼。」
私「ばーちゃんは?」

ば「ハンバーグ定食にするがね(ニコニコ)」



まさかの一番濃いやつ選んだな、、



少し面食らいましたがそのまま注文し、それぞれ食べ始めます。



このお店すんごい美味しいね、なんて話しながらゆっくり食べていると、祖母はポテトがたっぷり添えられたハンバーグ定食を瞬く間に平らげていました。



ば「美味しいねえ。ハンバーグもたまには良いねえ。いやあ美味しいわあ」



ニコニコしながら美味しい美味しいと繰り返す祖母を見て、私は気が付きました。



私「ばーちゃん、味覚障害やないと思う」


ば「?」


私「作ったやつ、味付けしてなかっただけやと思うよ」


蘭「あたしも思った」



昔から料理がとても苦手だったことを思い出しました。



病名を付けたがる悪い癖を改善し、あまり悲観的にならないよう穏やかに伝えました。



笑う祖母。安心した様子の蘭ちゃん。
うん。絶対元気。



お店を出て祖母を自宅へ帰し、帰ると言う蘭ちゃんと少し車内でお話しました。



妹の同級生なのですが、私をあーる姉ちゃんと呼んでずっと仲良くしてくれています。



家族が皆上京し、私が1人になったときも変わらず、いつも大きなバイクに乗って遊びに来てくれました。
夏の夜は揃ってパジャマのままバイクに乗り込み、海沿いを走らせてくれました。



また、4年前の4月、祖母が倒れたという連絡を病院から受けたとき、真夜中にもかかわらず電話の15分後には迎えに来てくれ、祖母の病院まで30分の距離をバイクで飛ばしてくれました。



蘭が早朝のアルバイトをしていたことを知っていたので、他の人にも連絡してみると言う私に、そのとき蘭は、「いいから」とだけ言いました。

病院に着いて少し落ち着いたときに礼を言うと、「あーる姉ちゃんが他の人に頼んでたとしても、あたしは1人で来てたよ」と返してくれました。


蘭「あたしのばあちゃんでもあるんだもん」


いろんな思いが込み上げてきて、そのとき私は、何も返せませんでした。




2人でのんびりと煙草を吸っているときにそんなことを思い出し、ちょうど4年前にも、ばあちゃんのことで助けてくれたねと、改めて礼をつたえました。


私「変わらず、私の家族を大事にしてくれるね。」



蘭「んー?家族だからねー」


隣を見ると、ニコニコしながら煙草を吸っていました。



両親と上手くいっておらず、高校生のときからずっと「あーる姉ちゃんたちの家族になりたい」と言っていた蘭ちゃん。



17歳のときから変えていない私のアドレスは家族全員のイニシャルです。



8年前からずっと、いつも、ありがとう蘭ちゃん。
君のイニシャルもそのときからずっと、入ってるんだよ。



後輩は何人もいますが、妹と思えるのは、蘭ちゃんだけです。



また、近いうちに帰るね。