エンジンでいうと日産のV6

「誕生日おめでとう。あーる」

 

先日迎えた私の誕生日に、メッセージを送ってきてくれたドイツさんとは、2年前の夏に知り合いました。当時私は、新宿で飲んでいたときにモンゴル人の女の子と知り合って意気投合し、英語しか話せなかった彼女と何とか(私が全く話せない)気合いでメッセージを飛ばし合って、勢いそのままに、知り合った数日後にお茶をする約束を交わしていました。

 

モ「あーる、あなたと沢山お喋りするために、通訳としてあたしの彼を連れて行くわ(英語。たぶんこんな感じだった)」

私「彼氏が通訳してくれるの?ありがたいなあ、3人で会えるのを楽しみにしているね(こんな感じで送ったつもり。私としては)」

 

友達になれた喜びはもちろんあったものの、上手く意思疎通ができないもどかしさも同時に強く感じていたので、通訳彼氏さんの話に私は舞い上がりました。助かった。

 

さて当日、お仕事終わりに待ち合わせ場所へ向かうと、ニコニコしているモンゴルちゃんの横に立っていたのは推定184㎝はありそうなヨーロッパ系の男性。

 

あれ?通訳......?

先入観とは恐ろしいもので、私は通訳と聞けば日本人が来るものだと信じて疑いませんでした。モンゴルちゃんが通訳として連れてきたのは、ドイツ人の彼氏でした。

 

モ「Hi,あーる♡(英)」

私「ハイ、モンゴルチャン(カタカナ日本語)+(惑)」

ド「初めまして、よろしくね(めっちゃ綺麗な日本語)」

私「?!」

 

目を丸くする私を気にする様子もなく、ドイツさんは「とても美味しいお店があるんだ、夕食を僕たちとどうかな?(本当に完璧な日本語)」と尋ねてきました。

 

日本語めっちゃ綺麗やし、どこの誰とも知らない私に食事まで誘っていただけるなんて。なんて、なんて素敵な人......!!モンゴルちゃんはずっと太陽のようにニコニコしているし、素敵な出会いに恵まれたなと安心しきったまま付いて行った先は、餃子の王将でした。

 

ド「僕たちのお気に入りだよ。君はこのお店が好きかい?」

私「めっちゃ好きですね。」

モ「決まりね♡入りましょう♡♡」

 

3人でテーブルについて注文を済ませ、好奇心旺盛なモンゴルちゃんの質問に(気合いで)答えるという形で、お喋りが始まりました。

とにかく英単語を並べる私と、私の発した英単語1に対し80程の単語数で返してくるモンゴルちゃん。一連の会話が終わると私はドイツさんに「果たして私たちの会話は成立していたのでしょうか」と日本語で尋ね、モンゴルちゃんは「あーるはどんなことを言っているのかしら?」とドイツ語で確かめるという、

 

モンゴルちゃん⇔私=英語

ドイツさん⇔私=日本語

モンゴルちゃん⇔ドイツさん=ドイツ語

 

という謎のテーブルが出来上がっていました。

謎すぎる。モンゴルちゃんとドイツさんが話し始めた瞬間も、思わず「Excuse me!?」

と使ってみたほどの衝撃でした。

ド「僕たちはドイツ語で喋るんだよ。モンゴルちゃんの大学の第二外国語がドイツ語だからね。」

第二外国語だったから?だと?

私フランス語やったけどメルシーしか覚えてない。モンゴルちゃん凄い。

 

話を戻します。

大変エネルギーを使う私との会話に少し疲れてしまったのか、はたまた純粋な気持ちで言ってくれたのか分かりませんが、モンゴルちゃんが突然、「日本語を教えてほしいわ♡」と私に言いました。(これだけはドイツさん経由やなくても分かった)

 

モ「あなたたち日本人がよく使うような、知っていたら便利な日本語がいいわ♡」

私は10秒ほど考え、「全然」と「大丈夫」の二語に決めました。これならきっと簡単。

 

私「せーの、ゼンゼン、そうそう。次は、ダイジョウブ、ダイジョウブ。上手だね、もっかい言ってみて」

 

初めて日本語を覚えられたのが嬉しかったのか、すぐにマスターしたモンゴルちゃんはリズムを取るためにテーブルを強めにタップしながら「ゼンゼン!ダイジョウブ!ゼンゼン!!ダイジョウブ!!」と10回ずつ繰り返し、浅皿に入った餃子のタレをテーブルにぶちまけていました。

私は慌てて「もう本当に、全然大丈夫、バッチリだよ」と言いながらモンゴルちゃんのタップと、「ゼンゼンダイジョウブ」運動を止めると、彼女はこれまたとっても素敵な笑顔で、「あーるありがとう♡大好きよ♡」と手を握ってくれました。

 

レンゲをスマートに握ったまま私たちのやり取りを微笑ましく眺めていたドイツさんを見て、「王将通るたびに、今夜のこと思い出すだろな...」と感じていたのでした。